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ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

イギリス在住のブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という本を読みました。多様性が大事大事と言われているけど、本当に異文化・多文化の理解ってできるのかなぁ、理解の壁になるのは何だろう、、、という疑問があって色々探していたときに見つけた本です。

格差、人種差別、貧困などの問題が、彼女と中学生の息子との会話を通じて、具体的なエピソードとして書かれていて面白く読みやすかったです。個人的には、水泳大会のエピソードが気に入りました。日本人とイギリス人のハーフである中学生の息子は、仙人ですか!と思うような深い発言をするのでびっくりです。外国で様々な問題を肌で感じて葛藤しながら育つと、こんなに大人びた子どもになるんでしょうか。。。子どもを侮るなかれ、だな!


本の中にでてきた「エンパシー」という言葉は初めて知りましたが、イギリスの学校では「シティズンシップエデュケーション」の導入が義務づけられていて、こういうことを学校で習うんだそう。「シンパシー」と似てるけど違う「エンパシー」という言葉。意味は「他人の靴を履いてみること」、つまり「自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだと思えない立場の人々が何を考えているのかを想像する力」とのこと。頭で分かってはいてもなかなか難しいことだからこそ、学校でもこういう教育に力をいれてるんだろうなー、と思いました。

斎藤道雄さんの本『手話を生きる』

斎藤道雄さんの『手話を生きる』という本を読みました。最近、ろうの人と知り合う機会があって何となく気になっているテーマだったので読んでみたのですが、知らないこと、誤解していたことばかりで衝撃の内容でした。

ろう者に対しては、聞こえないというハンディのある可哀そうな人、というイメージを持っていましたが、本の冒頭でいきなりそのイメージを一気に崩されました。ろう者同士は手話によって豊かなコミュニケーションができていて、自分たちのコミュニケーション方法に自信を持っているので、あえて聞こえるようになりたくはない、というのです。ろう者が、聴者(聞こえる人)と同じような方法でコミュニケーションできることを目指す、というのは、聴者の考え・希望であって、ろう者の思いとは一致していないというのは驚きでした。

『手話を生きる』斎藤道雄

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月の本や音楽

最近、月の写真を撮りはじめました。月の動きや満ち欠けについては、昔理科の授業で習ったはずだけどすっかり忘れていた。写真を撮り始めてから、月の出る時間や方角、月の形を気にするようになったら色々と不思議なことがあって面白い。知れば知るほど奥が深いなぁ。月に関する本や映画、音楽も気になりだしていろいろと漁っています。森絵都さんの「みかづき」という本は、教育とか格差とか、最近個人的に気になっていることとテーマがかぶってたし、森絵都さんの文章のうまさや登場人物たちの描写の面白さに引き込まれて、一気に読んでしまった。

あとは、寺尾紗穂さんの「楕円の夢」。彼女の声にはとても癒されます。
cf. 視聴

古川日出男さんの『おおきな森』

Youtubeで、古川日出男さんの朗読を聞いて、これは凄そうと思って、本も読んでみたら、やっぱり凄かった!

本のタイトルにある「森」という漢字も、漢字の森じゃなくて、その下にもう3つ、木が入っているように、この本の中には、漢字の読み、意味、形をつかった遊びがたくさん入っていました。文字の書き方(縦書き、横書き、空白)にもすごく心を配って書いていて、読みながら惚れ惚れです。あらためて思うけど、日本語には、漢字、ひらがな、カタカナと3種類もの文字が入っていて、他の外国語と比べてもとっても表現力が豊かだなぁ、と。ためしに「すごい!」をいろんな書き方で書いてみたら、やっぱりニュアンスが違ってて、面白い。
すごい!
スゴイ!
凄い!
SUGOI !

この本を読んでいると、なんだかジェットコースターにのっているような気分でした。というのも、文のリズムがバシバシ切りわって、ゆっくりと静かに進んでいるかと~と思ったら急にドドドドドッと展開が早まったり、シリアスな話の中に、サラっと爆笑ネタが入っていたりで。こんな小説が書けるのは、本当にすごいなぁ。古川日出男さんは、小説を書くだけでなく、舞台をやっている人らしく、会話はとてもリズミカルで面白かった。
この本の中には、坂口安吾や宮沢賢治の他、ガルシア・マルケス、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、フリオ・コルタサルなど、彼が影響を受けた作家の名前がたくさん出てきた。こんなすごい本を書く人が影響を受けた作家たちは、どんな人たちなんだろう。そっちにも興味がでてきた。
個人的には、本の登場人物の中では、振男・猿=コルタ(フリオ・コルタサル)が、お気に入りです!

まずは、朗読を聞いてみて、もし興味があったら本もぜひ読んでみてください。

cf.
【朗読】『おおきな森』著者・古川日出男が魂の朗読。【第一の森】
【朗読】『おおきな森』著者・古川日出男が魂の朗読。【第二の森】
【朗読】『おおきな森』著者・古川日出男が魂の朗読。【消滅する海】

黒部の山賊

友人から薦めてもらって、伊藤正一さんの「黒部の山賊」という本を読みました。山賊たちがたくましくてかっこよくて面白くて一気に読み!本に載っている小さな地図と照らし合わせながら読んでいたら、山に行きたくなった!山では、オーイと呼ばれても、オーイって返事しないようにしないと!

 

門田隆将さんの本、「死の淵を見た男-吉田昌郎と福島第一原発-」

ジャーナリストでノンフィクション作家の門田隆将さんの本、「死の淵を見た男-吉田昌郎と福島第一原発-」を読みました。2011年3月11日に東日本大震災が起きたとき、福島の原発で起きていたことが書かれている本です。事実に基づいた内容で難しい専門用語はなく、専門家でない私でもとても読みやすく、一気に読んでしまいました。現場の人たちの思いやその背景も丁寧に書かれていて、今まで知らなかったあの時の現場の人たちの気持ちや行動を知ることができました。緊迫した状況の中で、一番大切なものは何なのかを瞬時に判断して、冷静に勇敢に対応した吉田所長にはとても感動しました。そして、吉田所長をはじめ、現場で最後まであきらめずにたたかってくれた人たちに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

あの時、私は福島から大分はなれた東京(新宿)の会社にいたけれど、棚から本がバサバサ落ちたり、コピー機が飛んだりと、今まで経験したことのないくらいの長くて大きな揺れでした。電車がとまっているので何時間も歩いて家に帰ったこと、道路を歩く人の行列がなんだか戦時中みたいで怖いなと感じたこと、その後次々と起こる予想を超える事態に、日本はもうだめになってしまうのかな、普通に息をしたり走ったりするのもできなくなってしまうのかと不安に思ったこと、現実味が持てなくて、自分が映画の中にいるようだなと思ったこと、色々な情報が飛び交って何を信じていいかわからないので何とかして本当のことを知ろうとしたことなど、この本を読みながらあの時の記憶がよみがえってきました。

日本では、3月6日(金)に、この本を原作とした映画「Fukushima50」が公開されたそうです。本を読んだあと、この映画の予告編も見たら、また涙が出そうになりました。

幸いにも、彼らのおかげで最悪の事態は免れたけど、この事故で多くの方が亡くなった。原発の廃炉や汚染水処理はまだまだ終わっていなくて、今後も膨大な時間とお金がかかる。人間は、本当に途方もないものを作ってしまった。。。

日本語のアトリエ@図書館

先週の金曜日に、市の図書館で日本語のアトリエをしました。
アトリエで使えるような何かいい絵本はないかなぁ、と探していたときに、和田誠さんの「ぬすまれた月」という絵本をみつけてとてもいいと思ったので、今回はこれを使うことにしました。アトリエでは、まず絵本を一緒に読んでから、本の内容に関することなど、自由に会話しました。

私は、詩人の谷川俊太郎さんや作家の星新一さんが好きで、和田誠さんのイラストは彼らの作品の表紙にもよく使われていたので何度も見たことはあったんですが、和田誠さん自身については、そんなによく知りませんでした。和田誠さんが今年の10月7日にお亡くなりになったというニュースをみて、改めて和田誠さんってどんな人なんだろ?と探していたときに、「ぬすまれた月」という本に出会いました。

この絵本では、イラストだけでなく、文章も和田誠さんが書いているということで、面白そうだな、と思って読んでみたら、すごくよかった!内容が深くて、子どもだけでなく大人も楽しめる感じです。月が大好きな男が毎日月を眺めて楽しんでいるところから始まるこのお話。展開が面白くて、月の満ち欠けや日食、月食、潮の満ち引きなど、関する科学的な内容もところどころに挿入されててイラストもかわいくて、素敵でした~。参加者の方々も、気に入ってくれたようです!


次回のアトリエは、12月20日(金)の18時からの予定です。絵本等の作品は、日本語とフランス語の両方で読んで、会話も日本語とフランス語まぜてしますので、日本語が全然わからなくても大丈夫です。興味のある方は、ぜひいらしてくださいね!

cf.
Wada Makoto
Bibliothèque municipale internationale

ル・クレジオ『海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語』

France Culture というラジオで、ル・クレジオ(J.M.G. Le Clézio)のことを紹介していて、気になったので、彼の作品を読んでみました。何から読んでいいか分からず迷ったけど、文体がシンプルで読みやすいと言われている『海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語』(原題:mondo et trois autres histoires)を読んでみることにしました。海で凧揚げするシーンとか、太陽の光をたくさんあびて輝いている家とか、綺麗な映像が目に浮かぶような描写がたくさんあってよかったです!この小説は映画化もされてるそうです。見てみたいな~。

cf.
ル・クレジオ代表作おすすめ8選
J・M・G・ ル・クレジオ「フィクションという探求」(日本語字幕) [日本での講演会のビデオ、声が渋い~]

角田光代さんの『坂の途中の家』

角田光代さんの『坂の途中の家』を読みました。乳幼児虐待事件の裁判をめぐる話で、内容が重くて気持ちのいい話ではなかったですが、読み始めたら止まらなくなり一気に読みました。

声に出してサラっと言ってしまえば、何てことないようなことを、1人で考えているとどんどん被害妄想的になっていく主人公の気持ちは、ネガティブな時の自分と重なる部分もあり、自分のダークな部分を見透かされているようでいやな気持ちになりつつも、次はどうなるの?と先が気になりどんどん読んでしまいました。角田光代さんは、心理描写が本当に上手だなぁ。

角田光代さんが、太宰治の作品の中で一番好きなのは、『女生徒』という作品だそうです。青空文庫に無料で公開されていたので、早速読んでみたら、とっても面白かった!
以下は、冒頭の抜粋。(1文が長い~!)

あさ、眼をさますときの気持は、面白い。かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、じっと、しゃがんで隠れていて、突然、でこちゃんに、がらっとをあけられ、日の光がどっと来て、でこちゃんに、「見つけた!」と大声で言われて、まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、それから、胸がどきどきして、着物のまえを合せたりして、ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、急にむかむか腹立たしく、あの感じ、いや、ちがう、あの感じでもない、なんだか、もっとやりきれない。…

インタビュー映像:小説家 角田光代「心ゆさぶる物語を」
『女生徒』太宰治

ラフマニノフいろいろ

恩田陸『蜜蜂と遠雷』

以前住んでいた家の大家さんと一緒にごはんをたべました。
音学好きな彼女は、ラフマニノフのピアノ協奏曲に聞き入って、音楽に身をゆだねながら素晴らしいと連呼していました。
私は、クラシックに全然詳しくないですが、壮大でドラマチックないい曲だと思いました。
彼女の聞いていたのは、ヘレーヌ・グリモーの演奏でしたが、家に帰ってから、ネットで盲目のピアニスト、辻井伸行さんが演奏するラフマニノフをみつけました。これもなかなかすごくて驚きです。
ラフマニノフといえば、浅田真央ちゃんも、この曲で演技してましたね。
小説家の恩田陸さんは、ピアノコンクールを舞台にした『蜜蜂と遠雷』という小説を書いていて、そこには、ラフマニノフの他、色々なクラシックの曲がでてくるそうです。表紙も綺麗で、そそられます。
今度、読んでみよう。

cf.
1. Hélène Grimaud – Rachmaninoff – Piano Concerto No. 2 –
2. Nobuyuki Tsujii – Rachmaninoff – Piano Concerto No 2 –
3. Great performance by Mao Asada (Sochi Olympic Games 2014 free program – Rachmaninoff: Piano Concerto no.2 -)
4. “Honeybees and Distant Thunder” Riku Onda

どんぐり姉妹

グルノーブルの日本食材店、Ozenyaさんの本棚には、日本の本やまんがも置いてあります。
この前は、 よしもとばななの『どんぐり姉妹』を借りてみました。
どん子、ぐり子という名の姉妹のお話です。
どん子とぐり子って。。。なんちゅう名前!
シュールで静かでおもしろく、心温まるお話でした。

cf.
Ozenya

キツネとの出会い

昨日、Sappey – Hébert de Chamechaude を走りました。
幸運にも、キツネに遭遇。
むこうもこちらに気づいたのか、じっと私たちを見ていて、とてもかわいかったです。
キツネといえば、星の王子さまのキツネのシーンが好きです。

王子さまとキツネは仲良くなりますが、王子さまの旅立ちが近づいて悲しそうなキツネを見て、王子さまは、こんな悲しいことになるぐらいなら仲良くならなきゃよかったよ、と思います。そんな王子さまに、キツネは、言います。
「仲良くなってよかったよ。麦の色のせいでね。」

仲良くなる前、王子さまとキツネは、麦畑を見ながら、以下のような会話をしています。

引用
—–
それに、見てごらんよ!あそこに麦畑が見えるだろう?僕は、パンは食べない。だから僕にとって、麦は無用の物さ。麦畑を見たって、僕は何とも思わないんだ。それって、悲しいことだよ!でも、君は金色の髪をしている。だから、君が僕を飼い馴らしてしまえば、素晴らしいことになるんだ!麦は金色だから、麦を見ると君のことを思い出すんだよ。そして僕は、麦畑を吹き抜ける風の音が好きになるんだ…」
—–

星の王子さまは、名作だなぁ。
繰り返し、読みたい本です。

参考までに、フランス語の朗読が聞けるサイトとトランスクリプトのリンクをのせました。

cf.
星の王子さま 朗読 (キツネのシーン 26:00 -31:30)
星の王子さま きつねのシーン フランス語と日本語のトランスクリプト

花より団子

手前(みたらし団子)、奥(あん団子)/ 撮影:日本に住む母

最近、花の写真続きだったので、食べ物の写真にしてみました。
あー、美味しそう。みたらし団子、食べたいなぁ。

団子の威力は、風流をめでる心を上回るか!?
人間は生き物なので、何をおいても、食は基本ですね。

食で思い出しました。
少し古い本ですが、辺見 庸(へんみよう)の『もの食う人びと』という本を読みました。
様々な国をわたり歩いて書いた、食に関するルポルタージュです。
食を通じて人間の本質があらわれていて、壮絶です。

櫻の樹の下には

梶井基次郎の「櫻の樹の下には」という小説を知っていますか。
この小説の冒頭は、次のように始まります。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」
忘れられない一文です。
文章は、次のように続きます。
「これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。」
この文章を書くとき、梶井基次郎は、どんな桜を思っていたんだろう。
フランスの桜をみながら、そんなことを考えていました。

銀河鉄道の夜

『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治

宮沢賢治の小説、銀河鉄道の夜(Ginga Tetsudō no Yoru)。
フランス語版の綺麗な本を見つけたので、買ってみたけれど、タイトルを見てあれっと思った。

フランス語版のタイトルは、
Train de nuit dans la Voie lactée、「銀河を走る、夜の列車」になっている。
英語に直訳すると、Night Train In Milky Way みたいな感じかな。

「銀河鉄道の夜」という言葉を見たとき、なんとなく銀河を走る列車をイメージしていたけど、「夜」という言葉は、何にかかっているんだろう。「鉄道」それとも「銀河鉄道」?
それに、「鉄道」には、「線路」と「列車」の2つの意味があるし。
そもそも「銀河鉄道」って何だろう。
改めて考えてみたら、よく分からなくなってきました。

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