月別アーカイブ: 2019年8月

角田光代さんの『坂の途中の家』

角田光代さんの『坂の途中の家』を読みました。乳幼児虐待事件の裁判をめぐる話で、内容が重くて気持ちのいい話ではなかったですが、読み始めたら止まらなくなり一気に読みました。

声に出してサラっと言ってしまえば、何てことないようなことを、1人で考えているとどんどん被害妄想的になっていく主人公の気持ちは、ネガティブな時の自分と重なる部分もあり、自分のダークな部分を見透かされているようでいやな気持ちになりつつも、次はどうなるの?と先が気になりどんどん読んでしまいました。角田光代さんは、心理描写が本当に上手だなぁ。

角田光代さんが、太宰治の作品の中で一番好きなのは、『女生徒』という作品だそうです。青空文庫に無料で公開されていたので、早速読んでみたら、とっても面白かった!
以下は、冒頭の抜粋。(1文が長い~!)

あさ、眼をさますときの気持は、面白い。かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、じっと、しゃがんで隠れていて、突然、でこちゃんに、がらっとをあけられ、日の光がどっと来て、でこちゃんに、「見つけた!」と大声で言われて、まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、それから、胸がどきどきして、着物のまえを合せたりして、ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、急にむかむか腹立たしく、あの感じ、いや、ちがう、あの感じでもない、なんだか、もっとやりきれない。…

インタビュー映像:小説家 角田光代「心ゆさぶる物語を」
『女生徒』太宰治

韓国映画『パラサイト 半地下の家族』

今年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した韓国映画『기생충』(仏:Parasite、日:パラサイト 半地下の家族)を見てきました。衝撃的な場面がたくさんで、ラストも印象的で見終わったあと、しばらく動けませんでした。Bong Joon-ho(ポン・ジュノ)監督のことは全然知らなかったし、韓国映画にも興味がなかったけど、ポン・ジュノ監督すごい!!!!!と大感激。彼の作品を、他にも見てみたい!と思いました。ポン・ジュノ監督、ただものじゃありません、すごいです。要チェックです!

最初は、いいリズム話が面白く展開していくので、軽いコメディなのかな、と思いましたが、だんだんシリアスになってきて、貧富の差や人を騙したりすることについて考えさせられる映画でした。切り札を手にしたとたんそれまでの攻防の関係が一気に逆転したり、緊迫感のあるシーンが連続したりで、2時間11分が本当にあっという間でした。笑えるシーン、目をおおいたくなるシーン、びっくりして息をするのを忘れそうなシーンなど、いろんな要素がまざっていて、音楽もよくて、役者さんたちもみんな魅力的でひきこまれました。
韓国については、あまり知らないけど、本当にこんな家族や暮らしをする人たちがいそうな感じなんだろうか、と韓国についてもっと知りたくなりました。日本での公開は、2020年の1月の予定だそうです。ぜひぜひおすすめです!!!!!

cf. 映画『パラサイト 半地下の家族』に関する日本語の記事と予告編

Andry-Farcyの回顧展

グルノーブル美術館で今やっているAndry Farcy の回顧展に行ってきました。彼は、1919年にグルノーブル美術館の学芸員となり、前衛美術(アヴァンギャルド)の作品の収集に力を入れました。足りない予算は、市長やアーティストと交渉したり新聞などを通じて市民に呼びかけたりして寄付を募って、作品を徐々に増やしていったそうです。グルノーブルは、フランスで最初の近代美術の美術館で、世界的にみても近代美術の分野で先駆けだそうです。今こうやってここで近代のアーティストたちの選りすぐりの作品をたくさん見ることができるのも、彼のこんな努力のおかげなんだなぁ、と感心しました。

以下は、1921年の美術館の改修の際の、彼のスピーチの抜粋です。
« Mieux vaut balbutier des vérités naissantes que d’affirmer avec facilité des vérités conquises par nos aînés ». Discours d’Andry-Farcy à l’occasion du réaménagement des salles du musée, 23 juillet 1921.

『先人たちが手に入れた真実を、確かにそうだね~と言って流暢に話すよりも、生まれかけの新しい真実をたどたどしく話す方がいい。』(日本語訳:私)

cf.
Hommage à Andry-Farcy, un conservateur d’avant-garde [1919-1949]

自転車の話題2つ (2/2)

そして、悲しい現実・・・。

先日、自転車を盗まれました。ちょっと高価なU字型のごっつい鍵をかけていたのに、盗まれました。。。自転車を盗難された腹いせに、ふとそこらへんにある誰かの自転車を盗んでやろうか!っていう気持ちも出てきた。けどそこは、大人としてぐっとガマン。。。仕方ないので、とりあえずU字型のごっつい鍵だけでも回収しよ、と鍵だけ家に持って帰りました。

グルノーブルに住み始めてから盗まれるのは、これで2回目です。悲しいことにグルノーブルでは、自転車がよく盗まれます。町を歩くと、タイヤやサドルだけ盗まれたかわいそうな自転車をよく目にします。歩きながら、町をあらためて見渡してみると、駐輪用の柵に残されている鍵(私のように自転車が盗難されて、鍵だけ残ってるんでしょうか。)の多いこと!盗難自転車の転売が生業として成り立つから、自転車の盗難がなくならないらしいです。悲しい現実。。。

もうちょっと警戒が必要だったなぁ。使うのは遠出の時だけにして、町での移動はトラムや徒歩にしておけばよかったなぁ。自転車の鍵はU字型2個づけにしとけばよかったなぁ。後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔~!後悔の嵐!

自転車の話題2つ (1/2)

まずはいいニュース!自転車道について。

私はバスや電車より自転車が好きで、よく自転車にのっています。でも、せまい車道を走るときなど、ときどき車にぶつかるんじゃないかと怖いです。グルノーブルは、自転車の利用を推進していて、自転車道がどんどん整備されてきています。車道の端っこじゃなくて、真ん中を自転車が通るようになっているのもあって、こういう道路はとても走りやすくて気持ちいいです。

感じの悪い担当者

free box の契約をオンラインで申し込んだら、不足している情報があったみたいで、担当者から電話がかかってきた。その人のしゃべり方がもごもごしていて、そのわりには早口で、本当に聞き取りづらくて何度も聞き返してしまった。そうしたら、「本当しょうがないわねぇ。あなと話しても埒が明かないわ、フランス語がちゃんと分かる人に電話してもらって。」というようなことをため息まじりに言われて、会話の途中なのに一方的に電話を切られた。。。
もっと分かりやすく話してよ!担当者の横柄な対応に、本当にブチ切れそうになった。と同時に、一人前として扱ってもらえるように、もっとちゃんと聞き取ったり話したりできるようになりたい!と強く思った。こういう怒りとか悔しい!っていう感情はすごいエネルギーを持ってて、モチベーションをあげるのにとても良い。ので、まぁ、感じ悪い担当者にも感謝しようか。

面白い表現:Il n’y a pas le feu au lac

『Il n’y a pas le feu au lac』、英語に直訳すると『There is no fire at the lake』 。最初この表現を見た時、何か悲しい状況を表す表現なんだろうな、と思いました。日本では、特に夏には、川や湖や山など、色々な場所で花火大会が開催されます。『le feu』には、火、火事、花火、信号など色々な意味があって、私は『Il n’y a pas le feu au lac』という表現の中のこの『le feu』は花火を意味しているんだと思って、きっと何か花火大会の開催を妨げるようなことが起こって、「湖に花火がない」、「湖で花火が見られない」 ⇒ 「あぁ、なんて悲しい!」 という気持ちを表す表現なんだろうな、と思ったんです。
でも、私の予想とは違って、ここでの『le feu』は、単純に『火』とか『火事』っていう意味で、「湖に火がない」 ⇒ 「何も危険なことはない」 ⇒ 「慌てる必要はない」 ということを表す表現だそうです。こういう表現を知るのは面白いです!

補足:
もともとこの表現は、『Il n’y a pas le feu』(火がない)というシンプルなものでしたが、後に「au lac」(湖に)という言葉が付け加えられて、『Il n’y a pas le feu au lac』となったそうです。ちなみに、この湖は、スイスのレマン湖を指していて、のんびりとしたスイス人をからかう意味があるそうです。

電気が使えない

新しいアパートに引っ越しました。車を持っている友達に手伝ってもらって、とても助かりました。荷物が多かったので、車に全部つめるのか不安でしたが、なんとか1回で大丈夫でした!ちなみに、前のアパートは、電気代や水道代がコミコミだったので、自分で契約をする必要がなかったのですが、今回のアパートは、光熱費が含まれてないので、自分で電力会社や水道の会社に電話しなくてはいけません。なので、がんばって電話したんですが、電話で連絡してから、係の人が来て電気が使えるようになるまで、1週間ぐらいかかるそうなんです!予想より時間がかかる!!

というわけで、昨日は電気が使えませんでした。。。なので、蝋燭をともして夜をすごしました。ヘッドライトも大活躍でした。家にいながらちょっと冒険の気分になったし、月あかりも綺麗で、なかなかよかったです。明日の朝には、係の人が来てくれることになっていますが、蝋燭は電気代節約できるし楽しいので、定期的に蝋燭ナイトをしてみようかな。

wifi は、今のところ、カフェや図書館で使ってます。近所の図書館は、町の中心部にある図書館より素朴でいい感じ。